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早期教育否定論 行き過ぎた早期教育を否定する本。たしかに行き過ぎた早期教育はいけない。しかし早期教育は必要だと思います。小学校に入ってはじめてひらがなを習ったり計算を覚えるようでは学校の授業にはとうていついていけないのが現実です。基本的な読み書き計算は幼稚園で身に付けさせるべきだと思います。 出発点として 「こういう教育がいいよ」とか、あるいは逆に「世の教育論は間違いだらけだ!」とか声高に主張したり、誰かを糾弾したりする本ではありません。 子供の数が減少するのと反比例して増えてくる様々な教育論について、その激しい潮流の中で立ち止まり、冷静に見つめなおす機会を与えてくれる本、ということになると思います。 早期教育論がまとう「科学的根拠」についても、「人間」という、あまりに複雑な生き物に全面的に適用してよいものか、恣意的な利用は無いか、それは本当に子供のためになる教育=能力開発なのか、真面目で丁寧な見方で検証していきます。 もちろん、「子供なんて自然に放っておけば勝手に大きくなる」と乱暴な結論を出しているわけではなく、自らが早期教育を受けた時の気持ちや経験も語りながら、「親が情報に左右されて与える教育が子供の信頼を獲得できるものだろうか」と述べ、親それぞれが考え抜いた結果としての教育を与えるように主張しています。 これは、教育産業や学校(あるいは塾など)の理論に子供を任せる、あるいは「早期の英才教育こそ子供の将来の幸せになる」という盲目的信念に従うより、ずっと大変なことなのかも知れませんが。。。 読みやすいです 今流行の早期教育について,脳科学の観点から検証する好著. 非常に読みやすく,育児中の親・教員・一般の人にオススメ. 脳を専門にやっている人には少し物足りないかもしれないが,読み物として十分楽しめる. この手の本は何冊か読んだが,その中でも最後まで視点がぶれずよくまとまっている. 早期教育については様々な立場をとる人がいると思うが,積極的な立場の人にこそ立ち止まって読んでほしい一冊. 親並みの子であることの素晴らしさ 我が子を天才児に育てるにはどうすればいいのか。そんな問いを発したことのある親は多いだろう。昨今の加熱した早期教育のブームがそれを物語る。その早期教育ブームに一石を投じ、人としての成長の道すじを脳科学の面から論じたのが本書である。 早期教育と切っても切れない関係にある「臨界期」は、「ある時期を過ぎると、ある行動の学習が成り立たなくなる限界の時期」のことだが、それが「三歳児神話」などと結びついて早期教育を煽り立てた。だが、「臨界期」は生物が環境に順応して生きていくためのものであり、ネイティブのような発音を身につけさせたり、絶対音感を獲得させたりするための期間ではない。言い方を変えれば、成長するということは、本人にとって不必要な能力を捨て去っていくことでもある。それを裏付けるものとして、スウェーデン、アメリカ、日本のどの国の赤ちゃんにも「L」と「R」を聞き分ける能力は備わっているが、生後6ヶ月が過ぎると日本の赤ちゃんの多くは区別できなくなるという研究報告がある。 子供の将来への期待に関して、著者は「親並みでよいのでは」と答えている。それは、「発展」「前進」「成長」のキーワードを未だに信奉し続けている現代社会への重い警告である。 考える早期教育 少子化の現在、子供に対してかけられるお金が増え、早期教育をふくむ教育熱が高まっていると思う。 著者は障害児教育を専門とする立場から、一般的な早期教育に対しての提言・批判をしている。 頭ごなしに早期教育に反対するのではなく、現在あるデータを挙げつつ、自身の研究や体験を含めて、精緻に考察していく。 「こうすれば必ずうまくいく!」「これはやってはいけない!」といった一本調子な本が多い中で、その慎重な姿勢はとても好感が持てる。三歳児神話や幼児からの英語教育にも、「ちょっとまってくださいよ」と言いながら検証が始まるような流れ。 おおまかに流れている思想は、あまり極端なことをして偏りのあることをするよりも、こどもと親があり、家族があり、地域があるという状態を改善していく必要がありそうだ、ということ。 そんなにすぐに変わらないよ、と言われるかも知れませんが、なにごともできることからコツコツと。じっくりと書かれる著者の考え方から学べることがたくさんあります。
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